平成28年度税制改正では、中小企業の設備投資を後押しする税制の大幅拡充が行われ、
また、個人所得関係では、配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し等が行われます。
◆企業関係 |
法人税 | 中小企業向け投資促進税制の見直し | 平成29年4月1日以降の設備投資 |
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所得拡大促進税制の拡大 | 平成29年4月1日以後開始事業年度 |
◆個人関係 |
所得税 | 配偶者控除・配偶者特別控除の見直し | 平成30年分以後 |
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医療費控除に必要な添付書類を簡略化 | 平成29年分以後 |
相続税・贈与税 | 非上場株式評価方法の見直し | 平成29年1月1日以後 |
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その他 | 土地売買に係る登録免許税の 軽減措置を延長 |
平成31年3月31日まで |
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エコカ―減税対象基準を引き上げ | 平成29年5月1日以後 |
●中小企業経営強化税制
中小企業等強化法の計画認定に基づく設備投資を後押しするために、中小企業投資促進税制の上乗せ措置について適用対象に器具備品及び建物附属設備が追加され、中小企業経営強化税制とされます。この措置を受けるには経営力向上計画を作成して経済産業局等に申請し認定を受けなければなりません。経営力向上計画作成等については認定支援機関である当会計事務所に必ずご相談ください。
対象設備
類型 | 生産性向上設備(A類型) | 収益力強化設備(B類型) |
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要件 | ①経営強化法の認定 ②生産性が旧モデル比で年平均1%以上改善する設備 |
①経営強化法の認定 ②投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備 |
対象設備 |
●機械装置(160万円以上) ●測定工具及び検査工具(30万円以上) ●器具備品(30万円以上) ●建物附属設備(60万円以上) ●ソフトウェア(70万円以上) |
●機械装置(160万円以上) ●工具(30万円以上) ●器具備品(30万円以上) ●建物附属設備(60万円以上) ●ソフトウェア(70万円以上) |
その他要件 |
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税制措置 | 即時償却又は7%税額控除(資本金3千万円以下もしくは個人事業主は10%) |
●その他(中小企業投資促進税制など)
中小企業投資促進税制とは、生産性向上等を図る為一定の設備投資を行った場合に税額控除(7%)または特別償却(30%)が認められるというものですが、その対象設備から器具備品が除外され、平成31年3月末まで2年間延長されます。
中小企業投資促進税制 | 商業・サービス・農林水産業活性化税制 | |
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対象設備 |
●機械装置(160万円以上) ●ソフトウェア(複数合計70万円以上) |
●器具備品(30万円以上) ●建物附属設備(60万円以上) |
税制措置 | 税額控除(7%)または特別償却(30%) |
企業が支払う給与等が、一定割合以上増加した場合に、その増加額の10%を法人税額から控除する所得拡大促進税制について、現行制度に加え、平成29年度に高い賃上げを行った企業の税額控除をさらに拡大する改正が行われます。
<現行>
次の要件1~3を全て満たした場合、平成24年度比増加額の10%が税額控除されます。
税額控除限度額 (法人税額の20%(大法人は20%)を上限 | = | 平成24年度比増加額×10% |
<改正後>
現行制度に加え、要件3が「平均給与等支給額が前期比2%以上だった」場合、前事業年度からの増加額の12%が上乗せされます。
税額控除限度額 (法人税額の20%(大法人は10%)を上限 | = | 平成24度比増加額×10% | + | (上乗せ部分) 前期比増加額×12% |
●配偶者控除の縮減
納税者本人の所得金額に関係なく配偶者の給与収入が年103万円以下である場合に適用が受けられる配偶者控除について、納税者本人の給与収入が年1,120万円を超えると控除控除額が逓減していき、年1,220万円を超えた場合、適用が受けられなくなる改正が行われます。
納税者本人の 所得金額 |
控除額 | |
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70歳未満の配偶者 | 70歳以上の配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
1,000万円超 | 適用なし |
●配偶者特別控除の拡大と調整
納税者本人の給与収入が年1,220万円以下で配偶者の給与収入が年103万円超え141万円未満である場合に適用を受けられる配偶者特別控除について、配偶者の給与収入が年141万円未満から年201万円以下に引き上げられ、納税者本人の給与収入が年1,120万円を超えると控除額が逓減していく改正が行われます。
配偶者の給与収入 (目安) |
現行 | 改正後(平成30年分以後) | ||
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納税者本人の給与収入 | ||||
1,120万円以下 | 1,170万円以下 | 1,220万円以下 | ||
103万円超 105万円未満 | 38万円 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
110 〃 | 36 | |||
115 〃 | 31 | |||
120 〃 | 26 | |||
125 〃 | 21 | |||
130 〃 | 16 | |||
135 〃 | 11 | |||
140 〃 | 6 | |||
141 〃 | 3 | |||
150万円以下 | 適用なし | |||
155 〃 | 36 | 24 | 12 | |
160 〃 | 31 | 21 | 11 | |
167 〃 | 26 | 18 | 9 | |
175 〃 | 21 | 14 | 7 | |
183 〃 | 16 | 11 | 6 | |
190 〃 | 11 | 8 | 4 | |
197 〃 | 6 | 4 | 2 | |
201 〃 | 3 | 2 | 1 | |
201万超 | 適用なし |
平成29年分以後の確定申告から、医療費控除適用に必要な添付書類が医療費等の領収書に替えて、医療費の明細書(協会けんぽから交付を受けた医療費通知書等)や医薬品の購入明細書とされる改正が行われます。経過措置として、平成31年分までの確定申告については、領収書の添付が認められます。
上場株式の株価をもとに自社株式(非上場株式)の評価額を割り出す類似業種比準方式について、以下のような見直しが行われ、平成29年1月1日以後の相続により取得する自社株式の評価に適用されます。
●中小企業の円滑な事業承継等を阻害しないように、また、中小企業の実力を株式評価額により適切に反映させるために評価のもととなる上場株式の株価について、評価時点前、2年間平均値の採用を可能とする。
●成長・好業績企業の負担軽減の為、評価の3要素(配当金額、利益金額、簿価純資産価格)の比重を等しくする。
●時価純資産価格が高い企業の価格抑制のため、会社規模の判定基準を見直す。
土地売買の所有権移転登記に係る登録免許税を固定資産税評価額の1.5%とする軽減措置が平成31年3月31日までの登記に延長されます。
燃費性能の基準が引き上げられたため、エコカ―減税の対象車種が絞り込まれることが見込まれます。